みな川さんから歩いて10分もかからないうちに
西北のほうへ歩いて行くと
銀月アパートメントがある。
『ここです』
四月のあの時と違い
サルスベリのピンクの花が
わたしたちを
迎えてくれた。
古い階段をみんなであがって
南12号室へ向かった。
まるで
そこで住んでいるように
そこで少しの時間をくつろいだ。
彼女をここにお連れしたかったのは
わたしは
ここを今月最後で
やめるからなのだ。
借りていても
来る時間がない。
来る時間を作ることが
苦痛になるほどだった。
それにずっと我慢させている長女にも
そろそろ携帯がいる。
だから、
後悔はなかった。
だから、
今日、雨が降った時
彼女が京都に来ないのでは?と
一番に不安になったのは
実は、ここへお連れできなくなることが
嫌だったからだ。
最後の銀月を
彼女に見てもらいたかった。
みんなで集合写真を撮った。
それはわたしの宝物。
まるで
ファミリーが勢ぞろいするような
素敵な写真だった。
自然で。。。
彼女があのとき
わたしを見つけてくれなければ
わたしは
自分のどの作品にも出会えていない。
彼女との出会いがあるから
わたしはわたしの中の
溢れる想いを針と糸に託すことができる。
彼女と出会えたのは
もう奇跡でなく
必然だと思えるようになれた。
だから。
最後の銀月を
彼女とこどもたちで
来れたことで
後悔はない。

最後の階段を降りた。
また、わたしは
新しい階段を見つけている。
そう、わたしは
来年、個展をしようと思っている。
そこへ行くためにも
この階段は下りておきたかった。
新しい階段を進むために。。。
そして、それはまた
彼女の発信する東欧の美しい
手仕事に
わたしの心を揺さぶられながら。。。
最後のドアを出ると
蝉が鳴いているので
疎水沿いを歩いて帰った。
喜界島にも
京都にも
足を運んでくれた彼女に
わたしは
いつも
光を与えてもらっている。
キラキラとした
雨を受けた
美しい天の恵みのような光を。。。
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